(本日のコンテンツ)
1 令和6年度(問題44)条文型
2 令和6年度(問題45)条文型
3 令和6年度(問題46)条文型
皆様、おはようございます。
令和6年度(記述式)の過去問分析です。
1 令和6年度(問題44)条文型
(問題文)
問題44 総務大臣Yは、新たなテレビ放送局の開設を目的として、電波法に基づく無線局開設免許を 1 社のみに付与することを表明した。これを受けて、テレビ放送局を開設しようとする会社XがYに開設免許の申請をしたところ、Yは、その他の競願者の申請を含めて審査を実施し、会社Aに対しては免許を付与する処分(免許処分)をし、Xに対しては申請を棄却する処分(拒否処分)をした。これに対し、Xは取消訴訟を提起して裁判上の救済を求めたいと考えている。競願関係をめぐる最高裁判所の判例の考え方に照らし、Xは①誰を被告として、②どのような処分に対する取消訴訟を提起できるか。なお、現行の電波法は、審査請求前置や裁決主義の規定を置いているが、それらは度外視して、直接に処分取消訴訟ができるものとして考え、40 字程度で記述しなさい。
※ 丸数字は、理解を助けるため、まるやが付したものです。
(センター解答)
①国を被告として、②免許処分又は拒否処分のいずれかに対する取消訴訟を提起できる。
(まるや解説:標準)
東京12チャンネル事件(昭和43年12月24日)がモデル。この事件の最大の論点は、他社の免許処分を取消訴訟の対象にすることができるのかというもの(要は、原告適格)だったのですが、本問では、そのことは問われていませんので、センター解答のように書けばよろしいです。
もっとも、テレビの免許(地上波の帯域)は、限られており、一社が免許を受けると、他社は受けることができないので、下のように書くのかなと思っていました。
なお、総務大臣は、国に属しているので、行政事件訴訟法第11条第1項第1号に該当し、被告は国です。
(まるや解答:標準)
①国を被告として、②Aの免許処分及びXの拒否処分に対する取消訴訟を提起することができる。(42字)
【行政事件訴訟法】
(抗告訴訟)
第三条 略
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
3~7 略
(被告適格等)
第十一条 処分又は裁決をした行政庁(処分又は裁決があつた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁。以下同じ。)が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を被告として提起しなければならない。
一 処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体
二 略
2~6 略
2 令和6年度(問題45)条文型
(問題文)
問題45 Aは、海外からコーヒー豆を輸入して国内の卸売業者に販売する事業を営んでいる。Aは、卸売業者Bにコーヒー豆 1 トン(以下「甲」という。)を販売し、甲は、B所有の倉庫内に第三者に転売されることなくそのまま保管されている。Aは、Bに対し、甲の売買代金について、その支払期限経過後、支払って欲しい旨を伝えたが、Bは、経営不振を理由に、いまだAに支払っていない。BにはA以外にも一般債権者がいる。この場合に、Aは、甲についていかなる権利に基づき、どのような形で売買代金を確保することができるか。民法の規定に照らし、40 字程度で記述しなさい。
※ 赤字は、理解を助けるため、まるやが付したものです。
(センター解答)
(正解例1)Aは、動産売買の先取特権に基づき、一般債権者に優先して売買代金を確保することができる。
(正解例2)動産売買の先取特権に基づき、甲を競売して、一般債権者に優先して売買代金を確保する。
(正解例3)Bに催告し、相当期間履行がなければ解除権により契約解除し、甲の返還を求め、Aが売却する。
(まるや解説:標準)
三つも解答例があるのは珍しいですね。
問題文に「いかなる権利に基づき」、「どのような形で」とあるので、元々は、正解例2しか考えていなかったんでしょうが…
というのも、正解例1の確保方法は、Bが甲を誰かに販売した代金に物上代位していくことだから、甲が協力しない限り無理ですし、正解例3に至っては、どのような権利に基づいているかすら書かれていませんからね。
とはいえ、正解が増えても、幸せな人が増えるだけなので、今年も無害な年でした。
【民法】
(抵当権に関する規定の準用)
第三百四十一条 先取特権の効力については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、抵当権に関する規定を準用する。
3 令和6年度(問題46)条文型
(問題文)
問題46 Aは、Bとの間で、BがCから購入した甲土地(以下「甲」という。)を買い受ける契約を締結し、Bに対して代金全額を支払ったが、甲の登記名義はいまだCのままである。BC間の売買において、CがBへの移転登記を拒む理由は存在せず、また、BがCに対して移転登記手続をすべきことを請求している事実もない。一方、Aは、早期に甲の所有権取得の対抗要件として登記を具備したい。このような場合、Aは、①何のために、②誰の誰に対する③いかなる権利を、④どのように行使できるか。40 字程度で記述しなさい。
※ 丸数字は、理解を助けるため、まるやが付したものです。
(センター解答)
Aは、①Bに対する登記請求権の保全のため、②BのCに対する③登記請求権を、④Bに代位して行使する。
(まるや解説:標準)
債権者代位権の典型的な問題ですが、令和2年度の民法改正で明文化されていますので、ボーナス問題ですね。
なお、問題文には、移転登記とあるので、まるや解答は、移転登記請求としています。
(まるや解答:標準)
①BからAへの甲の移転登記請求権を保全するために②BのCに対する③移転登記請求権を④代位行使する。(45字)
【民法】
(登記又は登録の請求権を保全するための債権者代位権)
第四百二十三条の七 登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は、その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。この場合においては、前三条の規定を準用する。
それでは、今後とも、家内安全を第一に、無理のない範囲でお取組みください。
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