行政書士試験記述式過去問分析(平成21年度)

行政書士

(本日のコンテンツ)
1 平成21年度(問題44)概念型・条文型
2 平成21年度(問題45)条文型
3 平成21年度(問題46)判例型

皆様、おはようございます。
これまでの3年間が比較的素直な問題であったことに比べ、概念型と条文型の組合せなど、この年度は、ちょっと書きにくい感が強いです。(--;

1 平成21年度(問題44)条文型

(問題文)
Xは、外務大臣に対して旅券の発給を申請したが拒否処分をうけたため、取消訴訟を提起した。これについて、裁判所は、旅券法により義務づけられた理由の提示が不充分であるとして、請求を認容する判決をなし、これが確定した。この場合、行政事件訴訟法によれば、外務大臣は、①判決のどのような効力により、②どのような対応を義務づけられるか。40字程度で記述しなさい。

※ 丸数字及び赤字などは、理解を助けるため、まるやが付したものです。

(当時の正解例)
【例1】①拘束力により、②十分な理由を付して、何らかの処分をやりなおさなければならない。(38字)
【例2】①拘束力により、②十分な理由を付して拒否処分をやりなおすか、旅券を発給しなければならない。(43字)

(まるや解説:標準)
非常に書きにくい問題です。
条文上は、行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号。以下「行訴法」という。)第33条第2項の規定に本件を当てはめると次のようになりますので、
(まずは単純に当てはめ)
申請(旅券の発給申請)を却下し若しくは棄却した処分(拒否処分)が判決により取り消されたときは、その処分をした行政庁(外務省)は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければならない。
(本件に沿って枝葉落とし)
旅券の発給申請の拒否処分が判決により取り消されたときは、②外務省は、判決の趣旨に従い、改めて旅券の発給申請に対する処分をしなければならない。

ここまでで、②のどのような対応についての解答は判明します。
②外務省は、判決の趣旨に従い、改めて旅券の発給申請に対する処分をしなければならない。(41字)

しかし、「取り消されたときは~改めて」の「効力」の名称は、当然ながら、条文には書かれていません。当時の解答からも、講学上の概念を訊いているのでしょうし、せめて、「外務大臣は、判決のどのような効力により、どのような対応を」ではなく、「このような判決の効力は、講学上、何と呼ばれ、外務大臣は、どのような対応を」と書いてほしかったところです。なお、このような判決の効力は、講学上、①「拘束力」と呼ばれます。

そして、この「拘束力」の内容は、2つあり、一つは、条文上、明らかです。(②の対応を取らなければならない。)
しかし、もう一つは、同条第1項の規定には、「拘束する」としかなく、その意味を解釈しなくてはならないので、試験では、「判決により取り消された処分は、同じ条件下では、同じ理由で同じ内容の処分を行うことができない」と覚えてください。(違う理由ならOK。択一には、よく出ます。)

ただ、「拘束力により」をそのまま加えると文字数オーバーなので、少し端折って、こんな感じでしょうか。
(現場合わせ)
拘束力により、判決の趣旨に従い、改めて旅券の発給申請に対する処分をしなければならない。(43字)

なお、「判決の趣旨に従い」を具体的に書くとすると、問題文に「旅券法により義務づけられた理由の提示が不充分」とあるので、「充分な理由を付し」などと書くことになりますが、その続きは、「改めて旅券の発給申請に対する処分をしなければならない。」でよろしいかと思います。【例2】のように書いたとしても、新たな処分に当たっては、事情の変更を主張し、同じ理由で拒否処分を行うことも認められるので、全ての場合が網羅されないからです。

○行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)
第三十三条 処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。
2 申請を却下し若しくは棄却した処分又は審査請求を却下し若しくは棄却した裁決が判決により取り消されたときは、その処分又は裁決をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分又は審査請求に対する裁決をしなければならない。
3・4 略

(さらに先へ)
本件問題を解くには不要ですが、元となった判例を載せておきます。多数意見の重要な部分に下線を引いておきますので、それぐらいは、御一読ください。
なお、伊藤正巳補足意見は、余裕があればでいいと思います。

         主    文
     原判決を破棄する。
     被上告人の控訴を棄却する。
     控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人柴田信夫、同菅充行、同谷池洋、同仲田隆明、同松本剛の上告理由第一について
 外国旅行の自由は憲法二二条二項の保障するところであるが、その自由は公共の福祉のために合理的な制限に服するものであり、旅券発給の制限を定めた旅券法一三条一項五号の規定が、外国旅行の自由に対し公共の福祉のために合理的な制限を定めたものであつて、憲法二二条二項に違反しないことは、当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和二九年(オ)第八九八号同三三年九月一〇日大法廷判決・民集一二巻一三号一九六九頁)。これと同旨の原審の判断は正当であり、論旨は採用することができない。
 同第二について
 原審の適法に確定したところによれば、上告人が昭和五二年一月八日被上告人に対し渡航先をサウデイ・アラビアとする一般旅券の発給を申請したところ、被上告人は上告人に対し「旅券法一三条一項五号に該当する。」との理由を付した同年二月一六日付けの書面により右申請に係る一般旅券を発給しない旨を通知したというのである。
 旅券法一四条は、外務大臣が、同法一三条の規定に基づき一般旅券の発給をしないと決定したときは、すみやかに、理由を付した書面をもつて一般旅券の発給を申請した者にその旨を通知しなければならないことを規定している。一般に、法律が行政処分に理由を付記すべきものとしている場合に、どの程度の記載をなすべきかは、処分の性質と理由付記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきである(最高裁昭和三六年(オ)第八四号同三八年五月三一日第二小法廷判決・民集一七巻四号六一七頁)。旅券法が右のように一般旅券発給拒否通知書に拒否の理由を付記すべきものとしているのは、一般旅券の発給を拒否すれば、憲法二二条二項で国民に保障された基本的人権である外国旅行の自由を制限することになるため、拒否事由の有無についての外務大臣の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、拒否の理由を申請者に知らせることによつて、その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものというべきであり、このような理由付記制度の趣旨にかんがみれば、一般旅券発給拒否通知書に付記すべき理由としては、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して一般旅券の発給が拒否されたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に発給拒否の根拠規定を示すだけでは、それによつて当該規定の適用の基礎となつた事実関係をも当然知りうるような場合を別として、旅券法の要求する理由付記として十分でないといわなければならない。この見地に立つて旅券法一三条一項五号をみるに、同号は「前各号に掲げる者を除く外、外務大臣において、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」という概括的、抽象的な規定であるため、一般旅券発給拒否通知書に同号に該当する旨付記されただけでは、申請者において発給拒否の基因となつた事実関係をその記載自体から知ることはできないといわざるをえない。したがつて、外務大臣において旅券法一三条一項五号の規定を根拠に一般旅券の発給を拒否する場合には、申請者に対する通知書に同号に該当すると付記するのみでは足りず、いかなる事実関係を認定して申請者が同号に該当すると判断したかを具体的に記載することを要すると解するのが相当である。そうであるとすれば、単に「旅券法一三条一項五号に該当する。」と付記されているにすぎない本件一般旅券発給拒否処分の通知書は、同法一四条の定める理由付記の要件を欠くものというほかはなく、本件一般旅券発給拒否処分に右違法があることを理由としてその取消しを求める上告人の本訴請求は、正当として認容すべきである。原判決が右の程度の理由の記載をもつて
旅券法一四条の要求する理由付記として欠けるところがないとしたのは、法律の解釈適用を誤つたものといわざるをえず、これをいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件一般旅券発給拒否処分を取り消した第一審判決は結論において正当であり、被上告人の控訴はこれを棄却すべきものである。
 同第三について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官伊藤正己の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 裁判官伊藤正己の補足意見は、次のとおりである。
 旅券の本来の機能は、外国に渡航する国民に対し、その所属する国が本人の身分や国籍を証明し、外国官憲に便宜の供与と保護とを依頼するところにあつたが、現在では、諸外国とも旅券を所持しない外国人を一般に入国させないという国際的慣行が確立しているから、およそ外国に渡航しようとする者にとつて旅券の所持は必要不可欠であり、したがつて旅券の発給は出国の許可と同じ働きを持つものであり、その発給拒否処分は外国渡航の禁止の効果を持つことになる。そこで、本件は、国民の持つ外国渡航の自由の制約にかかわる論点を提起するものといえる。私もまた、旅券法一三条一項五号の規定が憲法に違反して無効であるとすることはできない、しかし、本件一般旅券発給拒否処分に付された理由は、その付記を求める法の要件をみたすものではなく、本件一般旅券発給拒否処分は違法として取り消されるべきであると判示する法廷意見に賛成するものであるが、この問題は、国民の海外渡航の自由の制限の合憲性という重要な論点にかかるものであるから、以下に、この点に関する若干の意見を補足しておくこととしたい。
 一 所論(上告理由第一)は、海外渡航の自由は憲法二二条二項において保障された基本的人権であるとし、旅券法一三条一項五号の規定が憲法の右規定に違反すると主張している(上告人は一審以来一貫してそのように主張する。)。そして、原判決の引用する第一審判決もまた、海外渡航の自由が憲法二二条二項の保障するところであることを前提としている。この点は、同項にいう外国に移住する自由には、外国に一時的に旅行する自由も含まれると解する当裁判所の判例(最高裁昭和二九年(オ)第八九八号同三三年九月一〇日大法廷判決・民集一二巻一三号一九六九頁)に沿うものである。
  しかしながら、私の意見によれば、日本国民が一時的に海外に移動する形で渡航する海外旅行はもとより、勤務や留学などの目的で一定期間外国に居住する場合であつても、日本国の主権による保護を享受しつつその期間を過ごし、再びわが国に帰国することを予定しているような海外渡航については、その自由は、憲法二二条二項にいう外国に移住する自由に含まれるものではない。同項は、日本国民が日本国の主権から法律上も事実上も離脱するという国籍離脱の自由と並んで、外国に移住する自由を保障しているが、この自由は、移住という言葉の文理からいつても、その置かれた位置からいつても、日本国の主権の保護を受けながら一時的に日本国外に渡航することの自由ではなく、永久に若しくは少なくとも相当長期にわたつて外国に移住する目的をもつて日本国の主権から事実上半ば離脱することの自由をいうものと解されるからである(前記大法廷判決における田中耕太郎裁判官及び下飯坂潤夫裁判官の補足意見並びに最高裁昭和三七年(オ)第七五二号同四四年七月一一日第二小法廷判決・民集二三巻八号一四七〇頁における色川幸太郎裁判官の補足意見参照)。国籍離脱の自由と右のように解釈された外国移住の自由とは、現代の国際社会において強く保障を受けるものであり、政策的考慮に基づく制約を受けるべきものではない。憲法二二条二項が、同条一項の自由と異なつて公共の福祉による制限を明文上予定していないことも意味のあることといわねばならない。
  以上のように解すると、一時的な海外渡航の自由は、憲法二二条一項によつて保障されるものと解するのが妥当であると思われる。同項にいう移転の自由は、住所を定め変更する自由のみでなく、人身の移動の自由を含むのであり、しかもこの移動は国の内外をもつて区別されないと考えられる。憲法二二条について、一項は国内の関係、二項は国外の関係を規律すると解する見解もあるが、形式的にすぎて適切ではない。したがつて、海外渡航の自由もまた、移転の自由に含まれることになる。このような移転の自由は、他の利益と抵触することも少なくなく、そのために公共の福祉を理由とする政策的見地からする制限を受けざるをえないのであり、憲法二二条一項が「公共の福祉に反しない限り」と特に明文で規定する趣旨もそこにあるとみることができる。海外渡航の自由に対してもまた、国際関係における日本国の利益などを考慮して合理的な制限を加えることが許されるのである(前記色川裁判官の補足意見参照)。
 二 このようにして、海外渡航の自由は、移転の自由の一環として公共の福祉を理由とする制約に服するものである。しかし、その制約が合理的なものであるかどうかを判断するにあたつては、移転の自由、特に海外渡航の自由の持つ性質を考えておくことが必要である。もともと移転の自由は、人を一定の土地と結び付ける身分制度を固定させていた封建社会から脱却して近代社会を形成したときに、職業選択の自由の当然の前提として自由に住所を定めそれを移動させることを認めたところに発するものであり、それは職業選択の自由と結び付き(それらを同じ条文のうちに保障する憲法の例が多い。)、したがつて、経済的な自由に属するものと考えられていた。移転の自由を専らこのような性質を持つものと解する限り、現代の社会においては、政策的な理由に基づいて広い制約を受けざるをえず、どのような制限を課するかについて立法府の裁量の余地は大きいといわねばならない。しかし、今日では、国の内外を問わず自由に移動することは、単なる経済的自由にとどまらず人身の自由ともつながりを持ち、さらに他の人びととの意見や情報の交流などを通じて人格の形成に役立つという精神的自由の側面をも持つことに留意しなければならない。そこで、移動の自由の制約が合理的なものであるかどうかを判断するにあたつては、それがこの自由のどのような面を規制するかを考察すべきものと考えられる。そして、一般に、海外渡航の自由を制限する場合には、精神的自由の制約という面を持つことが多いのであり、それだけにたやすくその制約を合理的なものとして支持することができないのである。
 三 このような観点に立つて、海外渡航の自由を抑止することとなる旅券の発給拒否処分の事由として旅券法一三条一項に挙げられるものをみてみると、その一号ないし四号の二の各事由は、公共の福祉に基づく合理的な制限であり、かつ、内容が明確であつて、合憲として是認することができる。問題となるのは、本件でその合憲性が争われている五号の規定である。所論は、この規定の定める拒否の基準は、極めて漠然かつ不明確であり、ほとんど政府の自由な裁量によりその拒否を決しうるとするに等しいから憲法に違反するものであると主張する。
  確かに、旅券法一三条一項五号の規定する「外務大臣において、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」という旅券発給拒否の事由は、その内容が明確性を欠き、恣意的判断を招くおそれが大きいといえるかもしれない。もし、海外渡航の自由が専ら精神的自由に属するとすれば、その基準の不明確性の故をもつて、右規定は文面上違憲無効とされる疑いが強いといえる(最高裁昭和五七年(行ツ)第四二号同五九年一二月一二日大法廷判決及び同昭和五七年(行ツ)第一五六号同五九年一二月一二日大法廷判決における各反対意見参照)。しかしながら、前記のとおり、海外渡航の自由は、精神的自由の側面を持つものとはいえ、精神的自由そのものではないから、国際関係における日本国の利益を守るためなどの理由によつて、合理的範囲で制約を受けることもやむをえない場合があり、右の規定を文面上違憲無効とすることは相当ではないと思われる。
  このようにして、旅券法一三条一項五号の規定が文面上無効であるとはいえないが、そのことの故をもつて、その規定の適用が常に合憲と判断されることにはならない。海外渡航の自由が精神的自由の側面をも持つ以上、それを抑止する旅券発給拒否処分には、外務大臣が抽象的に同号の規定に該当すると認めるのみでは足りず、そこに定める害悪発生の相当の蓋然性が客観的に存する必要があり、このような蓋然性の存在しない場合に旅券発給拒否処分を行うときは、その適用において違憲となると判断され、その処分は違憲の処分として正当性を有しないこととなる。
 四 そのように考えると、旅券発給の拒否処分について旅券法一四条の要求する理由の付記は、重要な意味を持つといわなければならない。この理由付記が求められているのは、法廷意見のいうように、拒否事由の有無について外務大臣の判断の慎重さと公正さを担保してその恣意を抑制するとともに、拒否理由を申請者に告知することによつて、不服申立てに便宜を与えるためであるが、この不服申立てには、適用違憲を主張することも当然に含まれており、したがつて、外務大臣が申請者の海外渡航には法の定める害悪発生の相当の蓋然性が客観的に存在すると判断した根拠が拒否の理由のうちに示される必要があると思われる。そうであるとすれば、単に旅券法一三条一項五号に該当するとのみ付記されているにすぎないときは、そのような蓋然性の存在を示すに由なく、法の要求する理由付記の要件を欠くものというほかはない。同号の規定が抽象的であるだけに、理由において具体的な事実関係を明らかにして、適用について憲法に違背するものでないことを示さねばならないと解される。このようにして、海外渡航の自由の保障という憲法の見地からみても、本件一般旅券発給拒否に付された理由は十分なものでなく、本件処分は違法といわざるをえない。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    安   岡   滿   彦
            裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    木 戸 口   久   治
            裁判官    長   島       敦

2 平成21年度(問題45)条文型

(問題文)
次の【事例】において、Xは、Yに対して、①どのような権利について、②どのような契約に基づき、③どのような請求をすることができるか。40字程度で記述しなさい。
【事例】
A(会社)は、B(銀行)より消費貸借契約に基づき金銭を借り受け、その際に、X(信用保証協会)との間でBに対する信用保証委託契約を締結し、Xは、同契約に基づき、AのBに対する債務につき信用保証をした。Xは、それと同時に、Yとの間で、Aが信用保証委託契約に基づきXに対して負担する求償債務についてYが連帯保証する旨の連帯保証契約を締結した。AがBに対する上記借入債務の弁済を怠り、期限の利益を失ったので、Xは、Bに対して代位弁済をした。

※ 丸数字及び赤字などは、理解を助けるため、まるやが付したものです。

(当時の正解例)
【例1】Aに対する求償債権について、連帯保証契約に基づき、保証債務の履行を請求することができる。(44字)
【例2】Aに対する求償権について、連帯保証契約に基づき、求償債務の弁済を請求することができる。(43字)

(まるや解説:標準)
こちらも、ちょっと書きにくい問題なので、まずは、事案を分かりやすく書いてみます。(普通は、この順序でしょう。)

  • 会社(A)は、銀行(B)に、お金を借してくださいと言った。
  • 銀行(B)は、信用保証がないと貸さないと言った。
  • そこで、会社(A)は、信用保証協会(X)との間で銀行(B)に対する信用保証委託契約を締結して、銀行(B)から、お金を借りた。(普通は、このタイミングで、会社(A)がYに連帯保証を頼むんでしょうが、この場合のYは、大抵、会社(A)の社長ですね。)
  • 信用保証協会(X)は、Yとの間で、会社(A)が信用保証委託契約に基づき信用保証協会(X)に対して負担する求償債務についてYが連帯保証する旨の連帯保証契約を締結した。

ここまでが事案の前提です。この前提において、

  • 会社(A)は、銀行(B)に対する借入債務の弁済を怠った。
  • そのため、会社(A)は、期限の利益を失った。(直ちに借金の残額全てを返さなくてはならなくなったという意味です。)
  • 信用保証協会(X)は、銀行(B)に対して代位弁済をした。(借金の残額全てを会社の代わりに銀行に支払ったという意味です。)

そうなると、法律なんて知らなくても、
会社(A)は、信用保証協会(X)に立て替えてもらったお金を返さなくてはならないですよね。

そして、これを信用保証協会(X)側からみると
信用保証協会(X)は、会社(A)から、立て替えたお金を返してもらう権利がある。
ということになります。

万が一、現場で条文が思い当たらないときは、このように常識(自らのリーガルマインド)で考えてください。
とはいえ、今回は、条文が分かっているので、当てはめます。

(条文に当てはめると)
保証人(信用保証協会(X))が主たる債務者会社(A)の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者会社(A)に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは、その保証人(信用保証協会(X))は、主たる債務者会社(A)に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する。

(枝葉を落とします。)
XがAに代わって債務の消滅行為をしたときは、Xは、Aに対し、そのために支出した財産の額の求償権を有する。

ただ、今回、訊かれているのは、信用保証協会(X)のYに対する請求です。
そこで、会社(A)とYとの連帯保証契約に基づき、信用保証協会(X)は、本来、会社(A)が返すべき前記お金をYに請求する場合が問われているのです。

ここまで書けば、
①が、Aに対し、そのために支出した財産の額の求償権
②が、AとYとの連帯保証契約
③が、Xは、Aが返すべきXが支出した財産の額をYに請求することができる。

これらを全部繋ぐと解答ですが、さすがに長すぎるので、色々端折って
(やむなく短縮)
①Aに対する求償権について、②XとYとの連帯保証契約に基づき、③保証債務の履行を請求できる。(43字)
ぐらいでしょうか。

正確には、XのAに対する求償権を、Xの保証人であるYに求めるのですが、例えば、「保証人として、求償債務の弁済を請求することができる。」とか書くと、さすがに字数をオーバーするので、「請求することが」もやむなく短縮して、この程度でいいのではないでしょうか。(問いがXのYに対する請求なので、②の「XとYとの」を略するのであれでば、請求することができるを復活させます。解答例は、「XとYとの」を略していますが、ここを略していいかどうかは、現場では悩みそうですね。)

○民法(明治二十九年法律第八十九号)
(委託を受けた保証人の求償権)
第四百五十九条 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する。
2 第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する。

3 平成21年度(問題46)判例型

(問題文)
次の【設問】を読み、【答え】の中の〔 〕に適切な文章を40字程度で記述して、設問に関する解答を完成させなさい。
【設問】
XはA所有の甲建物を購入したが未だ移転登記は行っていない。現在甲建物にはこの建物を借り受けたYが居住しているが、A・Y間の賃貸借契約は既に解除されている。XはYに対して建物の明け渡しを求めることができるか。
【答え】
XはYに対して登記なくして自らが所有者であることを主張し、明け渡しを求めることができる。民法177条の規定によれば「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」とあるところ、判例によれば、同規定中の〔 〕をいうものと解されている。ところが本件事案では、Yについて、これに該当するとは認められないからである。

※ 赤字は、理解を助けるため、まるやが付したものです。

(当時の正解例)
第三者とは、当事者もしくは包括承継人以外で、かつ登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者(44字)

(まるや解説:標準)
非常に有名な判例なのですが、明治時代のもので、裁判所のホームページに掲載されていなかったので、解答に必要な部分のみ記載します。
「民法177条の第三者とは、物権変動の当事者及びその包括承継人以外の者で、物権変動について登記の欠缺を主張する正当の利益を有するものをいう。」です。
今回は、これを入れるだけなので、解答は、当時の正解例とほぼ同じです。

(判例どおり)
第三者とは、物権変動の当事者及びその包括承継人以外の者で、物権変動について登記の欠缺を主張する正当の利益を有するもの

(40字対応)
第三者とは、当事者及びその包括承継人以外の者で、登記の欠缺を主張する正当の利益を有するもの(45字)

法文上、「~で、~もの」と絞り込む表現を使う場合は、最後の「もの」は平仮名で書くこととされています。素読みの際にでも、御確認いただければいいですが、法律の条文を書くに当たっての単なる決まりです。

それでは、本日は、この辺りとさせていただきます。
今後とも、家内安全を第一に、無理のない範囲でお取組ください。

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